いいおじいさんの話

いいおじいさんの話 小川未明 美うつくしい翼つばさがある天使てんしが、貧まずしげな家いえの前まえに立たって、心配しんぱいそうな顔かおつきをして、しきりと内うちのようすを知しろうとしていました。 外そとには寒さむい風かぜが […]

ああしんど

「ああしんど」 池田蕉園 よっぽど古いお話なんで御座ございますよ。私の祖父じじいの子供の時分に居りました、「三さん」という猫なんで御座ございます。三毛みけだったんで御座ございますって。 何でも、あの、その祖父じじいの話に […]

アーサー王物語

アーサー王物語 KING ARTHUR’S ROUND TABLE テニソン Tennyson 菅野徳助、奈倉次郎訳 本叢書は洽ねく大家の手に成るもの、或は青年の必讀書として世に傳はるものゝ中より、其内容文章 […]

ああ玉杯に花うけて

ああ玉杯に花うけて 佐藤紅緑 豆腐屋とうふやのチビ公はいまたんぼのあぜを伝ってつぎの町へ急ぎつつある。さわやかな春の朝日が森をはなれて黄金こがねの光の雨を緑の麦畑に、黄色な菜畑に、げんげさくくれないの田に降らす、あぜの草 […]

ア、秋

ア、秋 太宰治 本職の詩人ともなれば、いつどんな注文があるか、わからないから、常に詩材の準備をして置くのである。 「秋について」という注文が来れば、よし来た、と「ア」の部の引き出しを開いて、愛、青、赤、アキ、いろいろのノ […]

ああ華族様だよ と私は嘘を吐くのであった

ああ華族様だよ と私は嘘を吐くのであった 渡辺温 居留地女の間では その晩、私は隣室のアレキサンダー君に案内されて、始めて横浜へ遊びに出かけた。 アレキサンダー君は、そんな遊び場所に就いてなら、日本人の私なんぞよりも、遙 […]